研修案内
診療科の特色
信州大学医学部内科学第一教室は1948年に開講され、信州大学医学部でもっとも歴史と伝統のある教室です。信州大学医学部附属病院では、呼吸器・感染症・アレルギー内科を標榜し、一般内科の診療に加えて、呼吸器や感染症、アレルギー疾患の診療・臨床研究、そして医学生や研修医、内科専攻医の教育を担当しています。当教室での専門研修は広範な学識と豊かな人間性を兼ね備えた、よき臨床内科専門医および臨床的研究を行うことができる専門医の養成を目標としています。基本的な診断・治療の技術を習得することはもちろんですが、身体症候からその奥にひそむ疾病の本態を洞察する能力、さらには患者さんの全身状態を総合的に把握する能力を高めることを重視します。プライマリーケアを正しく行うことができる広い知識と技能をもつレベルの高い内科専門医の養成を目標とし、その基盤に立脚した呼吸器、感染症、アレルギー疾患に関する専門医を育成することを目指しています。
2007年9月に呼吸器内科と呼吸器外科が一体となり、“呼吸器センター”が開設されました。複雑かつ高度化する呼吸器疾患の円滑な診療を目指し、診断から治療に至るまで一貫して当センターが対応します。
対象とする疾患は、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、胸部悪性腫瘍(肺癌、縦隔腫瘍、悪性中皮腫など)、間質性肺疾患(特発性間質性肺炎、過敏性肺炎、サルコイドーシス、膠原病肺、リンパ脈管筋腫症、IgG4関連疾患など)、肺循環障害(急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、肺高血圧症、肺血栓塞栓症など)、睡眠呼吸障害、呼吸器感染症、HIV感染症、そして信州の立地に特徴的な高山病など多岐にわたります。
呼吸器内視鏡(気管支鏡)、精密呼吸機能検査は当科が担当する主な検査です。気管支鏡検査では、末梢超音波ガイドシース法やコンベックス型超音波気管支鏡による中枢気道周囲の病変穿刺はもちろん、バーチャル気管支鏡ナビゲーション、CTガイド下経気管支生検や、最新の診断法を取り入れています。局所麻酔下胸腔鏡の他、気管支鏡を用いたインターベンションにも積極的に取り組んでいます。超音波内視鏡に対応した気管支鏡手技習得用のシミュレーターも常備しています。精密呼吸機能検査では、スパイロメトリーのほか、ボディープレチスモグラフによる肺気量測定や気道抵抗測定、強制オシレーション法による呼吸抵抗測定、アストグラフ法による気道過敏性測定、呼気中一酸化窒素測定など、最先端の診断技術を駆使し多角的に呼吸機能を評価しています。医師自らが検査を行い、呼吸器疾患の精密診断はもとより、術前精査など他科からの要請にも迅速に対応しています。
喘息、COPDなどの気道系疾患、間質性肺炎や過敏性肺炎などのびまん性肺疾患、肺高血圧症などの肺循環障害、非結核性抗酸菌症などの呼吸器感染症は当科の得意とするところです。生活習慣病としても注目されている睡眠時無呼吸症候群の診断・治療においても県下有数の実績があります。また、リンパ脈管筋腫症やIgG4関連呼吸器疾患の病態解明や診療指針に関する多くの研究成果を報告しています。さらに、新規薬剤を用いた肺癌治療と臨床試験への参加、ARDSに対する血液浄化療法、登山者における高山病の治療、肺移植患者の登録および内科的管理、ニコチン依存症に対する禁煙治療など、当科の特徴は枚挙にいとまがありません。
専門研修の魅力
信大病院呼吸器・感染症・アレルギー内科における研修中は基本的に、数名の患者さんの受持ち医となり、卒後8年目以上の指導医がマンツーマンで直接指導にあたります。さらに助教クラスの病棟医長、講師・准教授の指導を受けます。基本的な診断・治療法の習得はもちろんのこと、指導医とともに基礎的な処置・検査手技のマスターを目指します。また、呼吸器内科・外科・放射線科・病理による合同カンファレンス(毎週)、クリニカルカンファレンス(CC)、クリニコ・パソロジカルカンファレンス(CPC)なども豊富で、外科医、放射線科医、病理医および他職種のスタッフを交えて活発に議論を交わしています。
気管支鏡件数は年間500件を超え、そのうち15%程度が気管支鏡インターベンションです。インターベンション件数は長野県随一であり、全国的にもトップクラスです。長野県呼吸器診療の最後の砦として、高い診断率と安全で低侵襲な手技を目指しています。
精密呼吸機能検査には直接医師が携わります。呼吸機能の原理と解釈に精通したスペシャリストを養成することを目標としていますが、呼吸機能検査の手技を習得し、検査の有用性を理解することは、呼吸器専門医としての幅が拡がります。
肺高血圧症の診断には、右心カテーテル検査をルーチンワークとして行っています。呼吸器内科医が右心カテーテル検査を行っている施設は全国的にも少なく、その成果に注目が集まっています。
当科は信大病院においてトップクラスの剖検実績があります。剖検によって得られる病 理診断と臨床診断の突き合わせは、臨床能力や診断力を養う上で非常に有用です。当科で専門研修を行うことで、大学病院ならではの希少疾患や難治性疾患、重症例、剖検例などが経験ができます。
サブスペシャリティー・学位取得の道筋
呼吸器・感染症・アレルギー内科では、希望する様々な将来像に応じて、呼吸器、感染症、アレルギーの専 門医取得を見据えたキャリアプランの選択が可能です。大学院への入学や研究留学についても弾力的に対応します。
取得可能な専門医
・内科専門医・呼吸器専門医・感染症専門医・アレルギー専門医
・日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・日本結核病学会結核・抗酸菌症認定医・日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・日本がん治療認定医機構がん治療認定医・日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・日本睡眠学会認定医・日本禁煙学会禁煙専門指導医
大学院での研究テーマ、臨床研究のテーマなど
高地医学
日本人の高地肺水腫における発症機序に関する分子遺伝学的な検討。高地民族の高地適応・順応に関する分子遺伝学的な検討。高地での睡眠時無呼吸症候群など種々の疾患に関する検討。
肺循環障害
呼吸器疾患に伴う肺高血圧症の病態、治療に関する検討。ラット肺高血圧モデルの構築および各種薬剤の予防効果の検討。
喘息およびCOPD
COPDの胸部HRCT所見および呼吸機能によるフェノタイプ分類および臨床的特徴の検討。各種バイオマーカーを用いた病態、全身性炎症の発生機序の解明。COPDの発症に関与する遺伝子の解明。喘息・COPDオーバーラップ症候群の呼吸機能を中心とした臨床的特徴の検討。気腫合併肺線維症の胸部HRCT所見、呼吸機能を中心とした臨床的特徴、遺伝子発現の検討。喘息、COPD、喘息・COPDオーバーラップ症候群に対する薬物療法の効果(呼吸機能、健康関連QOL、運動耐容能、予後等)の検討。
ラット肺気腫モデルの構築および肺気腫モデルラットを用いた各種薬剤の予防効果の検討。
リンパ脈管筋腫症(LAM)
新薬(シロリムス)の長期投与に関するコホート調査研究。LAMの特定疾患(指定難病)臨床調査個人票を用いた疫学研究。
肺癌・胸部悪性腫瘍
胸腺癌および肺癌の生物学的特性と治療効果の検討。全国多施設共同研究への参加。長野県内多施設共同研究への計画・実施。
呼吸器内視鏡
内視鏡的インターベンション、バーチャル気管支鏡ナビゲーション、末梢超音波ガイドシース法などを用いた新規診断技術に関する臨床研究。
呼吸器感染症
肺非結核性抗酸菌症の診断と新たな治療法の開発。質量分析器を用いた微生物検査の応用。Pneumocystis jirovecii の臨床研究。発熱性好中球減少症の臨床研究。
間質性肺疾患
薬剤性肺障害の疫学的および分子遺伝学的検討。IgG4関連肺疾患の臨床研究。THP-1、A549細胞などを用いた間質性肺炎の共同研究。ブレオマイシン吸入ラットの肺線維症モデルを用いた基礎研究。ぺリオスチンと間質性肺炎に関する研究。
国内留学・海外留学
内科専門医取得後、あるいはSubspecialty専門医取得後、希望に応じて臨床研修留学や研究留学を行います。最近の留学実績を示します。いずれも先方より費用の一部負担があります。
国内
国立がんセンター中央病院(東京、胸部悪性腫瘍に関する臨床研修と基礎研究)
海外
コロラド大学(米国・オーロラ市、COPD/肺高血圧の研究)
バージニアコモンウェルス大学(米国・リッチモンド市、COPD/肺高血圧の研究)
ヴァンダービルト大学(米国・ナッシュビル市、肺損傷/肺高血圧の研究)
ジョンス・ホプキンス大学(米国・ボルチモア市、肺損傷の研究)
将来の就職先など
就職・開業は、内科専門医取得に加え、呼吸器、感染症、アレルギー領域の専門医取得後が望ましいと考えます。ただし、各人の希望を尊重し柔軟に対応します。当科の関連病院であれば基本的に就職可能で、豊富な同窓会員の下、様々なサポートが受けられます。主な関連病院を以下に示します(順不同)。
- 県立須坂病院(須坂市)
- 長野市民病院(長野市)
- 長野赤十字病院(長野市)
- 長野松代総合病院(長野市)
- 篠ノ井総合病院(長野市)
- 新町病院(長野市)
- 信州上田医療センター(上田市)
- 鹿教湯三才山リハビリテーションセンター(上田市)
- 市立大町総合病院(大町市)
- 北アルプス医療センターあづみ病院(北安曇郡池田町)
- 丸の内病院(松本市)
- まつもと医療センター 中信松本病院(松本市)
- 岡谷市民病院(岡谷市)
- 諏訪赤十字病院(諏訪市)
- 伊那中央病院(伊那市)
- 飯田市立病院(飯田市)
連絡先
信州大学医学部内科学第一教室、信州大学医学部附属病院呼吸器・感染症・アレルギー内科
- 住所
- 〒390-8621 長野県松本市旭3-1-1
- 電話
- 0263-37-2631
- FAX
- 0263-36-3722
- tateishi@shinshu-u.ac.jp
- (統括医長:立石 一成)