切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌または進展型小細胞肺癌患者に対するアテゾリズマブ併用療法の多施設共同前向き観察研究におけるバイオマーカー探索研究
当院で「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌または進展型小細胞肺癌患者に対するアテゾリズマブ併用療法の多施設共同前向き観察研究(以下「主研究」)」に参加し治療を受けられた小細胞肺癌の患者さんのご家族の方へ
研究協力のお願い
当科では「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌または進展型小細胞肺癌患者に対するアテゾリズマブ併用療法の多施設共同前向き観察研究におけるバイオマーカー探索研究」という研究を行います。 この研究は、「主研究」に参加し治療を受けられた患者さんを対象としています。
研究目的や研究方法は以下の通りです。「主研究」に現在参加中及び今後参加される患者さんについてはご意向を確認いたしますが、「主研究」に参加されお亡くなりになられた患者さんについては直接のご同意はいただかずに、この掲示によるお知らせをもってご同意を頂いたものとして実施されます。ご家族の皆様方におかれましては研究の主旨をご理解いただき、本研究へのご協力を賜りますようお願い申し上げます。
この研究へのご参加を希望されない場合、途中からご参加取りやめを希望される場合、また、研究資料の閲覧・開示、個人情報の取り扱い、その他研究に関するご質問は下記の問い合わせ先へご連絡下さい。
(1)研究の概要について
研究課題名 | 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌または進展型小細胞肺癌患者に対するアテゾリズマブ併用療法の多施設共同前向き観察研究におけるバイオマーカー探索研究 |
研究期間 | 研究実施許可日~2024年7月31日 |
当院における研究責任者 | 信州大学医学部附属病院 呼吸器・感染症・アレルギー内科 立石 一成 |
(2)研究の意義、目的について
この臨床研究の目的は、アテゾリズマブと抗がん剤を併せた治療において薬の効き方や副作用を予測することができるバイオマーカー*1を探すことです。
がん細胞は表面に「PD-L1」という物質を出し、この「PD-L1」とがん細胞を攻撃する免疫細胞の表面にある「PD-1」という物質が結合することにより、免疫細胞のはたらきにブレーキがかかります。アテゾリズマブを含む免疫チェックポイント阻害剤は、この「PD-L1」と「PD-1」の結合を阻害し、免疫細胞のはたらきを再び取りもどすことにより効果をもたらすと考えられています。
現在、免疫チェックポイント阻害剤の有効性を事前に予測するバイオマーカーには、非小細胞肺癌においてはがん細胞表面の「PD-L1」がもっとも使用されていますが、がんの発生や進行する仕組みには様々な因子が関与しているため、「PD-L1」だけですべてを予測するのは難しいといわれております。一方、小細胞肺癌における有用なバイオマーカーは、いまだに特定されておりません。したがって、新たなバイオマーカーが望まれています。
この研究により、薬の効き方や副作用を予測できる新しいバイオマーカーが見つかれば、より適切な患者さんにアテゾリズマブと抗がん剤を併せた治療を行うことが可能となり、非小細胞肺癌および小細胞肺癌の個別化医療の推進につながることが期待されます。
(3)研究の方法について(研究に用いる試料・情報の種類および外部機関への提供について)
当院で「主研究」に参加し治療を受けられた小細胞肺癌の患者さんに対して通常診療の一環として行われた検査や手術で摘出された腫瘍組織を用います。
研究に用いる試料・情報は以下の通りです。
試料:腫瘍組織
情報:検体採取日
試料は測定実施機関である国立がん研究センター中央病院へ輸送され、腫瘍微小環境*2に存在する細胞表面上のタンパク質や免疫細胞の数を測定します。測定結果は「主研究」により得られる治療成績との関連を統計学的に検討します。
この臨床研究は、外部機関および当院の倫理審査委員会の審査を受け、研究の内容の科学性や倫理性、患者さんの人権が守られていることが確認されております。
(4)共同研究機関(試料・情報を利用する者の範囲および試料・情報の管理について責任を有する者)
研究代表医師 | 日本肺癌学会・日本医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科学分野 主任教授 弦間昭彦 |
共同実施組織 | 特定非営利活動法人日本肺癌学会 |
実施責任組織 |
中外製薬株式会社 |
その他の共同研究機関 |
この臨床研究は全国の医療機関で実施されます。他にどのような医療機関が参加しているかお知りになりたい場合は、当院における問い合わせ等の連絡先までご連絡ください。 |
(5)個人情報保護について
登録された患者さんの同定や照会は、「主研究」の登録番号を用いて行われます。氏名などの直接患者さんを特定できる情報が、データベースに登録されることはありません。
また、この臨床研究で得られた結果は学会や医学雑誌などで公表されることがありますが、患者さんの氏名などの個人情報が外部に漏れることは一切ありませんので、患者さんのプライバシーは固く守られます。
(6)研究成果の公表について
この臨床研究で得られた結果は、研究終了後にすみやかにまとめられ、学会や医学論文などで公表される予定です。
(7)知的財産権について
この臨床研究により生じた研究成果は、臨床研究の実施責任組織である中外製薬株式会社に帰属します。
また、得られたデータを用いた研究成果として特許などが生じた場合には、測定項目の測定事務局、日本肺癌学会および中外製薬株式会社で協議のうえで、その帰属を決定しますので、あなたが権利を得ることはできません。
(8)利益相反の管理について
この臨床研究は、中外製薬株式会社からの資金提供により実施されるため、利益相反*3となる可能性が考えられますが、研究は医学的な視点から適正に行われ、意図的に資金提供者の都合のよい成績に導いたりすることができないよう、中立性と公明性を維持して計画されています。
また、当院の研究責任医師や研究担当医師などは、臨床研究の実施に先立ち、研究に影響を及ぼすような利益相反に関する状況を把握し、研究の結果の公表を予定する学会や医学雑誌の求めに応じて適切に開示します。
(9)当院における問い合わせ等の連絡先
信州大学医学部附属病院 呼吸器・感染症・アレルギー内科 立石 一成
〒 390-8621 長野県松本市旭3-1-1
電話番号:0263-37-2631
~用語集~
*1 バイオマーカー:バイオマーカーとは、体の中の生物学的な変化を定量的に把握するための指標のことで、主に「遺伝子」と「タンパク質」に分類されます。このバイオマーカーを測定することにより、治療効果や副作用などの反応を予測することができる可能性があります。
*2 腫瘍微小環境:がん細胞を囲む微小な環境のことを指します。腫瘍微小環境は、腫瘍細胞だけでなく、免疫細胞などの様々な細胞や組織で構成され、腫瘍の進行に大きな役割を果たすことが知られています。
*3 利益相反:臨床研究の実施に際して外部との経済的な利益関係などによって、研究の実施に必要とされる公正かつ適正な判断がそこなわれる、またはそこなわれるのではないかと第三者から懸念される事態を指します。