再生医科学教室での基礎研究

内科学第一教室、大学院生2年目の高橋秀和と申します。

私は基礎研究を学ぶべく、2022年4月より柴 祐司教授率いる再生医科学教室へ出向しており、近況報告を兼ねて簡単に紹介をしてみたいと思います。

ご存知、柴 祐司教授は、内科学第一教室出身の循環器内科をご専門とされている先生ですが、iPS細胞を使った基礎研究で、最高峰の学術誌であるNatureに投稿されている(しかも2本も!)ことは周知の通りです。柴先生は、大学院修了後、米国シアトルにあるワシントン大学に3年間留学されており、帰国後の研究として、カニクイザルのiPS細胞を使った心筋移植の実験成果をまとめられています。

再生医科学教室では、博士課程の医学系研究科の他、修士課程や外国人留学生の受け入れもしています。今は中国からの留学生が2人在籍しており、母国語の中国語だけでなく、日本語と英語を使いこなしています(トリリンガル!)。医師になると、どうしても医師同士のコミュニケーションに偏りがちですが、再生医科学教室では修士課程の方や留学生の方たちとの交流があり、とても新鮮でよい刺激となっています。また、心臓血管外科や脳神経外科の先生も研究されており、研究カンファレンスではいつも勉強させて頂いています。

出向当初より、主に細胞培養の研究をしていますが、私自身は細胞培養の経験は全くありませんでした。大学医学部に在籍していた当時、3年生のときに基礎研究室配属の期間が確か2~3ヶ月程度あった記憶がありますが、正直、何をやっていたか覚えていません。現行の医学部教育では、基礎研究について学ぶ・接する機会が圧倒的に少なく、一体どのようなことができるのか想像できませんでした。最初は面食らいましたが、丁寧なご指導のおかげで何とか続けられています。

再生医科学教室では、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)に一定のファクター(成長因子や細胞の足場、必要な栄養素の添加など)を一定の順序で加えることで、機能や形態を変化させて心筋細胞や神経細胞などに分化誘導させる技術をベースとして、様々な内容の研究をしています。私自身は2型肺胞上皮細胞への分化誘導実験を今年から始めています。まだまだ論文にできるような成果がお示しできませんが、諦めずに継続していきたいと思います。

また、今年は研究費獲得のため、研究助成金公募への応募・申請書の作成を行い、一部のもので採択してもらうことができました。研究費の獲得も、基礎研究を継続するうえでは非常に重要であり、また申請書の作成も非常に難しいものです。ここに関しては、上の先生も相当に苦労されており、単純に過去の業績だけでなく、今の研究で何が示せるのかという、いわゆる「学術的問い」を明確に示す必要があり、どのような実験計画で具体的な手法まで記載する必要があります。正直、そこまで具体的に書けないよ、という本音があるのですが、少しずつ経験を積み重ねていきたいと思います。

末筆になりますが、現在の基礎研究がうまく軌道に乗れば、内科学第一教室での新しい研究テーマの開拓につながるかもしれないと思っています。後進の先生方のためにも日々邁進していきたいと思います。

ある日のラボの懇親会にて

内科学第一教室
大学院生 高橋秀和

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