緩和ケアセミナー

今年度は緩和ケア内科で働く機会をいただき、あっという間に半年が経過しました。医療用麻薬を含めた鎮痛薬の使用や、呼吸困難の緩和は、呼吸器内科の臨床上必須といっても良いスキルなのでなじみのある分野ですが、専門の先生方の中で働くことで新たに得るものはたくさんありました。また、自分の専門領域以外の診療に触れる機会は研修医以来となるので、「今はこういう治療があるのか~!」とか「この疾患の治療はこういう流れなのか…」など、よい勉強の機会となっています。

9月はじめに『緩和ケアセミナー』も開催され、10年ぶりくらいにファシリテーターの立場で参加しました。薬剤や手法のアップデートはあるものの、セミナーの流れや内容は卒後数年目に自分が参加したときと同じだったので、当時のことを思い出したりしました。肺がんの診療はこの10年で劇的に進化しましたが、当時はまだ分子標的薬はEGFR阻害薬2剤のみ、それ以外は殺細胞性のレジメンを2nd-lineくらいまでやったらその次の選択肢に悩むような時代でした。バッドニュースを伝えなければならなかった日、診断からずっと担当していた患者さんを看取った日、アパートへの帰路で悲しくなって、泣きながら車を運転したこともありました。

『緩和ケアセミナー』は基本的な緩和療法のスキル習得を目標としています。緩和ケアという専門分野はありますが、そこに委託するだけでは緩和ケアは成立しないと思います。すべての医療者が基本的なスキルを身につけ、目の前の患者さんの身体的・精神的つらさを和らげるために今何ができるのか?を自ら考えて行動することで初めて有効となると感じています。また、医療者のバーンアウト(燃え尽き)を防ぐためにも、基本的なスキルは役に立つと思います。「どうすることもできなかった」「うまく対応できなかった」という無力感は、燃え尽きを加速します。10年前の自分は確かに一生懸命な医師でしたが、そのままのテンションで診療を続けていたらバーンアウトしていたかもしれません。診断~治療、再発、終末期など、様々な局面でのつらさを踏まえ、それを和らげるスキルを持つことで、自分のメンタルを大きく崩すことなく、目の前の患者さんへ対応することができるようになると思っています(まだ修行中!)。

呼吸器内科医の目線から提案できる症状緩和も少なくないので、呼吸器内科の診療に関しても自分のアップデートを頑張っていきたいと思います。こちらに関しては、優秀な若手の先生たちにとっても助けられています。同僚に恵まれるとはこのこと。バイタリティーあふれるタイプではないので、子育てと仕事の両立は常に七転八倒(七転び八起きではなく…)ですが、一緒に働かせていただけてありがたい限りです。

余談
・今年は生まれて初めて釣り堀に行きました。丸々太ったニジマスが入れ食い状態、魚が飲み込んだ針を外すのがこんなに大変なのは知りませんでした…(血だらけの惨事)。

・ラズベリーを植えて数年たったらすごく増えてきました。植えた当初、「間違って苗木じゃなくて添え木の方を植えちゃった?」というくらい、ただの木の棒みたいだったのが、地下茎でこんなに増えるとは…

・子供に頼まれてパクチー料理をあれこれ試すことに。パクチーカレーはまずまず、パクチー餃子は紹興酒がいけなかったのか「食べられなくはない」とのこと。一番ウケが良かったのはインスタントのフォーにパクチーを散らしたやつ。ちょっとがっくり。

小沢 陽子

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