集中治療部に配属となり5年目になった

そもそも私が医者を志した理由は、自分が小児喘息を患っていたからである。

季節の変わり目などに具合が悪くなり、よるぜぇぜぇして寝られず、母親に背中をさすってもらった事は今でも良く覚えている。結構きつかった。とはいうものの、大学病院を含め大きな病院に入院や通院をしたことはない。かかりつけの診療所には良く通った。この流れだと、「診療所の先生になりたい。」や「小児科医になりたい。」と考えるのではと後々思ったが、大学入学時から「喘息の患者さんを楽にできるのは呼吸器内科医でしょ。」と考え、今に至った。

兵庫県神戸市出身だが、親・親戚で跡を継ぐ必要はなく、いざとなれば5時間ほどで帰省することができるし、出身大学の人脈を活かした方が良いのではと考え、長野県で呼吸器内科医となった。

根っからの負けず嫌いで、「呼吸」がつく問題でわからないとは言いたくなかったため、気になる事はその都度調べて、知識を増やし、実践してきた(つもりである。)

呼吸器内科として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎で肺が傷んでいる患者さんや、高齢の患者さん、肺癌の終末期の患者さんに対して、気管内挿管を行って人工呼吸管理をする機会はあまり多く無かったので、人工呼吸管理が得意と思ったことはなく、今でも分からないが多いけれど、担当させて頂いた数少ない人工呼吸管理患者さんに、あぁでもない、こうでもないと施行錯誤しながら対応してきたら、集中治療が得意な医者だと思われたようで、今、ICUにいる。

ICUに入室した他診療科の患者さんで呼吸に問題がある事は結構多いので、やりがいは感じる。但し、主治医として、患者さんの急性期から慢性期まで、もしくは終末期まで責任を持って診させて頂くこと、患者さんおよびその家族と現在の状態について話をして、マネジメントしていくことにやりがいを感じていたので、ICUを退室した後にあまり積極的に関わる事ができない点は少し寂しく感じている。

非常に重症でも、提供した治療の効果が得られ、回復する余力があると、劇的に良くなる患者さんも多く経験した。一方、治療が奏功せず、どのように看取っていくか、治療の引き際を決めきれず、苦しい思いをさせてしまう事も同じくらいかそれ以上経験した。医師としてできることは何か、できないことは何か、医療倫理というものを改めて考えさせられている。

ICUでも必要とされる呼吸器内科であるが、呼吸器内科専門医は非常に少ない。2023年6月21日現在、全国の呼吸器内科専門医は7597名、長野県に至っては120名である。少ない人数で多くの患者さんをみていると忙しそうにみえてしまい、研修医や学生の皆さんに敬遠されてしまうのだろうか。一方、この問題を解決する方法は、研修医や学生さんに呼吸器内科を志してもらえるようにすることしかない。

関東近辺の病院の方が症例が多く経験できるという話をよく聞くけれど、長野県で18年働いてきて症例が経験できないと思ったことは一度もない。

学生の皆さん、研修医の皆さん、長野県で呼吸器内科として一緒に働いてみませんか?

追伸
ICUに配属されて、改めて医療倫理について勉強して、この本は非常に考えさせられました。日本の慣習として、終末期医療にはまだまだ課題はあるけれど、すこしずつ良い方向に持って行ければ良いと思っています。高い本ではないので、是非読んでみてください。

終末期ディスカッション 4070円

市山 崇史

一覧へ戻る