COVID-19と漢方薬

プレスリリースがあったので、速報でコラムを書きます。
河北新報 2022年12月2日(金)

東北大学を中心に行われた研究です。
COVID-19感染症に罹患した軽症・中等症の患者に対して、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を内服した群と、症状に応じて解熱剤やせき止めを服用する群を比較しました。

発症から4日以内に漢方薬を使った患者は通常治療グループの患者より回復が早く、酸素吸入を必要とする重度の呼吸不全へのリスクが低かったという結果でした。

詳細は論文化を待って確認するしかなさそうですが、上記のような報告がありました。
私は日常診療で漢方薬を頻用しており、風邪の治療には総合感冒薬よりは葛根湯を処方しています。我々医師が教わる標準の薬物治療で上手くいかない症例で漢方薬が奏功する例をこれまで多く経験してきました。
一方、呼吸器内科領域では、漢方薬による薬剤性肺障害の患者さんを診察する事もあります。小柴胡湯はインターフェロンと併用すると薬剤性肺障害を起こすので禁忌というのは、国家試験の過去問でも有名です。
但し、COVID-19感染症では解熱鎮痛薬のカロナールや、咳止めの処方のみで、軽症とはいうもののなかなかつらい症状を抱えている方がいるという事を見聞きします。
集中治療部では重症呼吸不全を伴ったCOVID-19感染症の患者さんしかみないため、軽症の患者さんの治療を行う機会がありません。機会があれば、処方したいと思います。ただし、葛根湯は多くの病院で採用されていると思いますが、小柴胡湯加桔梗石膏は採用されていない事が多いかもしれません。

ちなみに保険適応前の1日薬価をツムラの薬価で算出すると、

薬品名 1gあたり 1日あたり(7.5g 分3)
葛根湯(ツムラ1) 8.3円 62.25円
小柴胡湯加桔梗石膏(ツムラ109) 37.5円 281.25円

薬代だけだと、1日薬価合計は343.5円です。 3割負担103.05円になります。
そこまで高くはありません。

ちなみにこのレジメンは、以前より漢方薬を一般診療にどんどん用いようと紹介して下さっている「サイエンス漢方研究会」の井齋偉矢先生(医療法人德州会日高德州会病院院長)が出されている本でも紹介されています。
副作用がとりわけ多いわけではありませんが、全く無いわけではありません。しかし、比較試験の結果もでたようなので、使用を検討しても良いと思います。ちなみに私に利益相反はありません。

新型コロナと速効! 漢方

青春出版社 2021年9月25日発売 1000円(税別)

2022年12月2日

集中治療部 市山 崇史

 

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