最近読んだ本について

前回の私のコラムの続編として昨年下半期に読んだ本の中からいくつかを読書感想文的に紹介いたします。

「銃・病原菌・鉄」(ジャレド・ダイアモンド著、草思社文庫)

以前朝日新聞で「ゼロ年代の50冊」という企画がありました。その内容は2000~2009年に出版された書籍で優れたものを識者に選んでもらうというものでした。その中で第1位に選ばれた書籍です。「アメリカ大陸の先住民はなぜ、ユーラシア大陸の住民に征服されたのか」「世界各地でなぜ文明は異なる発展をとげたのか」といった疑問の根本的原因をつきつめていく内容です。分子生物学、言語学、文化人類学など様々な領域に渡り考察され、最終的に地理的要因が原因であり、人種差が原因ではないと結論づけています。実例の羅列がやや冗長に感じることはありますが、知的好奇心を刺激される内容です。

「仮面山荘殺人事件」(東野圭吾著、講談社文庫)

東野圭吾はベストセラー作家であり、その著作は数多く実写化されています。ただ私も過去に何作かミステリーを読んだのですが、今ひとつぴんときませんでした(読みやすい文章でありすらすら読めるのですが、ミステリーの中心となるトリックに魅力を私は感じることができませんでした)。しかしこの仮面山荘殺人事件は違いました。外部との連絡が絶たれた孤立した山荘で殺人事件が起こるという古典的な本格ミステリーの設定ですが、最後にはどんでん返しが待っています。ミステリーなので内容は詳しく記載しませんが、私はこのようなどんでん返しが大好きです。

「天地明察」(沖方丁著、角川文庫)

江戸時代初期、ずれが生じ始めていた中国伝来の暦を改めて、日本独自の暦を作ること(改暦)に情熱を燃やした渋川春海を描いた時代小説です。全体の半分以上を費やして何故彼が暦を作るようになったかが描かれており、実際の暦を作る場面は後半も佳境に入ってからとほとんど描かれません。しかし前半部分の渋川本人および周囲の人物の描写がすばらしく生き生きとしており、改暦を達成した瞬間は非常に感動します。また改暦後の渋川の生き方も少し描かれますが、余韻を残すような描き方でこちらも非常に印象的でした。2012年に映画化もされています。

牛木淳人

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