本邦初の生体部分肺移植が施行されてから20年が経過しました。

1998年10月28日に、本邦初の生体部分肺移植が24歳の女性に岡山大学で施行されました。そして、今週の日曜日がちょうどその28日でした。20年目を記念して、ささやかなランチ・タイムを彼女と当時のスタッフ達と一緒に過ごしてきました。

振り返ると、今でこそ珍しくなくなったヘリコプター搬送ですが、Jackson-Ree’s 回路と携帯用人工呼吸器を使用しながらドクターカーと防災ヘリ(“アルプス”(松本-京都)⇒“桃太郎”(京都-岡山)の御世話になり、多くの方に助けられながら無事に彼女を当院から岡山大学病院へ4時間20分で搬送することができました。私がこれまでの人生で最も緊張した1日でした。搬送の際にお世話になった方々に、この場をお借りして御礼申し上げます。また、大変お世話になったアルプスの訃報には非常にショックを受けました。皆様の御冥福を心よりお祈り申し上げます。

岡山大学附属病院では人工心肺に繋がれた後、まず、彼女の両側肺が切除されました。御母様の左下葉が彼女の左胸郭内に、妹様の右下葉が彼女の胸郭内に収まりました。当時の清水教授、伊達先生(現京都大学呼吸器外科教授)らのチームの働きは、手術を見学していた私達はもちろん、日本中の人々に大きな感動を与えてくださいました。そこから、本邦の肺移植が始まったのです。

あれから20年が経過し、肺移植は日常診療のひとつの選択肢になり、医師国家試験の問題にもあたりまえのように出題されています。彼女はその間、何度か入院されてはいますがその度に復活し、現在も健常人と同様の生活を送りながら私の外来に通院されてます。SpO2も97%(室内気)です。残念ながら御母様は亡くなられましたが、左の下葉は今も彼女の中でしっかり機能してくれています。本当に多くの方々に支えられた結果、今があるかと思うと、非常に感慨深いものがあります。

これまで彼女に携ってくださった当院のスタッフはもちろん、岡山大学、京都大学の先生方、スタッフの皆様に心から感謝を申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。

山本 洋

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