今年読んだ本について
私の趣味の一つはありきたりですが読書です。フィクション、ノンフィクションにまたがって様々なジャンルを読むのですが、共通していることは「直接仕事と関係ない本を読む」ということです。特に意識してそのように決めているわけではないのですが、趣味の最中まで仕事のことを思い出したくないと、無意識にそうなっているのかもしれません。また出張中や出先でも気軽に読めて、経済的でもある文庫、新書を中心に読んでいます。
今年読んだ本の中からいくつかを読書感想文的に紹介いたします。
「峠」(司馬遼太郎著、新潮文庫)
幕末の越後長岡藩家老、河井継之助の話です。司馬遼太郎の幕末物ですと「竜馬がゆく」、「燃えよ剣」などが有名で、これらの本の主役の坂本龍馬や土方歳三に比べますと、河合継之助の知名度は落ちると思います。長岡藩は幕末の戊辰戦争では薩長を中心とした新政府側と戦い、最終的に敗れてしまいます。その様な道を選んだ河合継之助の生き様、考え方が語られています。自分が置かれた立場でやらなければならないこと、やるべきことを徹底的に突き詰めていく河合継之助の信念には感銘を受けました。
「ゼロからわかる虚数」(深川和久著、角川ソフィア文庫)
学生時代は決して数学が好きというわけではなかったのですが、試験を離れて改めて数学に触れてみると非常に面白く感じます。二乗してマイナスになる虚数という数字は実感がわきにくい数字でとっつきにくいのですが、本書の中の複素数平面を用いた虚数の説明は非常に明快です。特に複素数(実数+虚数)のかけ算が複素数平面における座標の点の回転であるという点は直感的に理解しやすかったです。同様に負の数のかけ算(マイナス×マイナスは何故プラスになるのか)も座標平面における点の回転という説明で、目からうろこが落ちる感覚でした。学生時代もこのようなことは学んだはずなのですが、いやいや勉強していたためか、まったく印象に残っていません。
「死刑 その哲学的考察」(萱野稔人著、ちくま新書)
昨年書店でみかけて読んでみたいと思っていたのですが、未読のままでした。今年7月にオウム真理教が関わった事件で死刑を宣告された13人の刑が執行されたニュースを見て、改めてこの極刑について考えてみたく、読んでみました。本書では死刑の是非を犯罪抑止力、被害者遺族の処罰感情、政治哲学的観点などから検討しています。最終的に死刑反対という結論にいたるのですが、その思考過程が非常に論理的に明快で、わかりやすい内容になっています。また本書の中で述べられている相対主義では何も解決せず、思考停止に陥ってしまうという内容がとても印象に残りました。
最近はスマホの普及により日本人全体の読書量が減っているそうです。確かに以前は電車の中では新聞や本を読んでいる人を多く見かけましたが、最近はほとんど目にすることはなく、皆スマホを見ています。スマホによるネット検索を用いた目的地一直線の情報収集もメリットは多いと思います。しかし読書の方が優れている点も多くあると思います。例えば論理的な思考力や読解力を養うには読書の方が優れていると個人的には思います。
もうすご「読書の秋」になりますので、皆様も秋の夜長にお気に入りの一冊をみつけてはいかがでしょうか。
牛木 淳人