Professor Marius Hoeper先生の講演会
12月4日、ACTELION主催で、肺高血圧症でご高名なマリウス・フーパー先生をお招きして講演会が開催されました。
前座として、私は強皮症関連肺高血圧症・手指潰瘍におけるオプスミットの有用性について話をしました。オプスミット使用後、明らかに強皮症の手指症状や呼吸困難は改善したのですが、それをどのように評価していくかについては曖昧なままでした。花岡先生に質問されて、BNPや6分間歩行のことをあまり意識していなかったことが反省点でした。フーパー先生もそういった評価方法についての重要性を指摘してくださいました。
フーパー先生の講演は非常にクリアで、わかりやすく構成されていました。普段は1群とか、3群の肺高血圧について関わることはありますが、2群の肺高血圧の扱いなども簡単に解説されていました。2群については残念ながらオプスミットの出番はなさそうです。4群についてはまだこれからというところでした。
個人的な感想ながら、アクテリオン社の発売するトラクリアやオプスミットは素晴らしい薬だと思います。私は1人の患者さんに使用しただけですが、患者さんの具合が悪くて日夜苦しんでいて、自分もどうにかなってしまいそうになったとき、トラクリアを使い始めたところ、みるみる全身状態が改善したのです。助かった!という感動は今も忘れられません。
なお、肺高血圧症というのは一般的に馴染みの薄い疾患だと思います。その治療薬であるトラクリアとオプスミットはエンドセリン受容体拮抗薬です。米国のファーチゴット先生が、血管拡張物質が内皮細胞から発せられることを発見したのが1980年であり、その7年後にそれが一酸化窒素であることを発見し、98年にノーベル賞を取られました。筑波大学出身で、現テキサス大学教授の柳沢正史先生が血管収縮物質であるエンドセリンに関連したトラクリアの開発に寄与されました。
講演会の後で、フーパー先生を囲んで当科の医師数名で食事会が開催されました。非常に真面目な先生で、ちょっと冗談を言ってみたりしたのですが、受け流されてしまいました。ただ、単純な質問でしたがどうして肺高血圧を勉強するきっかけになったのか訊いてみました。学生の頃、肺高血圧の患者がいて、それが肺高血圧を研究するきっかけになったそうです。疑問を持ち続けてそれを長年続けていくと、花開くことがあるでしょうか。
加藤あかね