新年の抱負

nigaoe
似顔絵を書いてもらいました。

厳しい寒さの正月が過ぎ、三寒四温という言葉がぴったりの季節になってきました。1月中旬から2月上旬の松本は、早朝7時頃、凛(りん)とした空気の中、冠雪の常念岳が頂上から麓へ徐々に赤く染まっていく朝焼け(モルゲン ローテ)が素晴らしい。私が最も好きな風景の一つです。遅くなりましたが新年の抱負を述べたいと存じます。

本年も信州大学医学部内科学第一教室、信州大学医学部附属病院 呼吸器センター 呼吸器・感染症・アレルギー内科に対しまして昨年と同様のご指導・ご鞭撻をお願いいたします。

呼吸器病学は扱う疾患が多く、感染症学、免疫学・アレルギー学、腫瘍学の三大分野に加え、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、間質性肺疾患、肺循環障害、睡眠時無呼吸症候群、薬剤性肺炎など多岐にわたります。わが国ではこれらの多くの疾患で増加が著しく、今後も呼吸器病学の重要性が増す事は言うまでもありません。

昨年秋、厚生労働省は、全国の病院長に対し、不足する医師の調査をまとめました。その結果、内科領域では、呼吸器内科医が1.2倍必要との回答で、最も多い数となりました。多くの病院が呼吸器内科医を要望しております。これに答えるべく、学生教育、研修医教育、専門医教育により一層の充実を図りたいと決意を新たにしております。

学生教育、研修医教育では、呼吸器診断学の基本である医療面接、身体診察、胸部エックス線写真/胸部CTおよび簡易呼吸機能検査の解釈をマスターできるよう指導したいと存じます。また、「呼吸器疾患は全身性疾患の鑑である」と言われています。全身を診ることの重要性を強調したいと思います。さらに、初期/後期研修医には、抗菌薬の使い方や呼吸管理の基本的事項を教えたいと存じます。

専門医教育は、呼吸器病学の幅広い分野を学び、3年間で呼吸器専門医を取得できるよう指導します。総合内科専門医も可能な限り取得させたいと思います。

勿論、研究も充実させます。近年、呼吸器学の進歩には著しいものがあります。その推進力は、分子・細胞生物学、遺伝子学などの新しい研究手法の導入、呼吸器内視鏡検査、胸部CTなどの機器の進歩・普及、PCR、生化学的検査など検査学の進歩です。さらに、従来、呼吸器病学は治療法のない難治性の疾患が多いとされてきましたが、最近、COPD、喘息、感染症、肺癌、肺線維症、肺高血圧症など、多くの領域で新規の治療薬が導入されています。新規の治療は患者がその恩恵が得られる以上に、対象疾患の病態についての見直しや新たな解明など、その領域は格段に進歩します。

研究マインドを持った専門医の育成が、今後の日本の医療・医学にとっては極めて重要です。多くの先生に呼吸器学に進んで頂き、その期待にこたえるようより一層努力したいと存じます。

多くの若い先生に当科で一緒に勉強する事を期待しています。

平成23年2月上旬
久保 惠嗣

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