指導医講習会に参加してきました

10月22,23日に信州大学で開催された指導医講習会に参加してきました。指導医講習会とは厚生労働省のホームページによれば、「医師の臨床研修に係る指導医講習会を開催する者が参考とすべき形式、内容等を定めることにより、 指導医講習会の質の確保を図り、もって臨床研修指導医の資質の向上及び臨床研修を行う病院・施設における適切な指導体制の確保に資することを目的とするものである」との目的で開催されます。具体的には7年目以上の医師が臨床研修のカリキュラムを作成することで各医師の指導能力の向上を目的としたワークショップです。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000068481.pdf

今回は信州大学を中心としたワークショップということで信州大学医学部附属病院の各診療科の先生方を中心に35名ほどの医師と、スタッフの方々が20名ほど集まって行いました。

研修は朝9時から夜6時まで合計二日間の過密スケジュールでした。ここでは9人ぐらいのグループに分かれて臨床研修のカリキュラムの作成を行いました。カリキュラムを作成するという作業を通じ研修医教育についてディスカッションし、研修医が身につけるべき基本的臨床能力についての考えを深めました。まず研修医に必要な臨床能力とは何か、ということから定義し、それをどのように実行し、最終的に研修医をどう評価するのか。議論して発表するということを繰り返しました。
またそのカリキュラムとは別にコーチングや1分間のフィードバックについてのレクチャーとロールプレイを行いました。

私がこの研修会に参加して感じたことは臨床研修制度が開始され、医師の教育に対する姿勢や、考え方が大きく変化しているということです。臨床研修医制度以前までは完全な徒弟制であり、上司のやることを見て学ぶだけでした。一方、医師は教育についての学習は皆無といっていいほどしておらず、指導法は指導医個人に任されていました。また、市中病院において研修医教育が重要されることはほとんどなく、教育熱心な先生の評価は高くありませんでした。近年、医学生に対する教育も含め、医学教育のあり方はで大きく変化し、医学生や研修医のレベルが高くなってきています。研修医教育については臨床研修センターなどの教育部門が作られるようになり、以前の徒弟制というよりは認知的徒弟制といった形で進化しており、いかに研修医の自主性を尊重して学ばせるか、ということを重視するようになっています。
このように研修医教育の質の向上は研修医の先生方にとってもメリットが大きいということだけではなく、効率的に教育できることによって医師全体のレベルの向上に寄与し、しいては社会にも還元できることであろうと感じました。

また、今回のセミナーに参加して得られた貴重な経験は、他の診療科の先生と接する機会を得たことです。普段は他の科の先生方と診療以外のことで会話をすることがなかったため、研修医教育に対する考え方を聞けたことは私にとっては新鮮であり、自分自身、あらためて考えさせられることがたくさんありました。

指導医講習会は、厚生労働省によりカリキュラム作成のワークショップということで指定されているため、フレキシビリティの少ないプログラムとなっています。これは講習会の質を担保する上ではやむを得ないかもしれません。率直な意見としては良い研修カリキュラムを作ることは重要ではありますが、いかにそのカリキュラムを実際の現場で活用し活かしていくか、とうことも重要だと感じました。カリキュラムをいかに他の指導医に周知し、活用してもらうにはどうしたら良いのか、研修委員会で議論し、さまざまな工夫をしてく必要があると感じました。

最後にまたこのような会を企画するにあたっては多くの先生方が、忙しい中プライベートの時間を削ってご協力くださいました。(本来であれば業務の中に研修として組み込んでいただくような形がよかったかもしれません)ご協力いただいた先生方のお心遣いに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

西江 健一

一覧へ戻る