呼吸器疾患の紹介

呼吸器の病気についてその特徴を説明します。

呼吸器疾患は扱う疾患が多彩です。

呼吸器疾患の大きな特徴は、腫瘍、感染症、アレルギー、自己免疫性疾患など扱う疾患の種類が多いということです。気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺がん、呼吸器感染症が4大疾患です。

さらに、間質性肺疾患、膠原病に伴う肺疾患、薬剤性肺障害、職業性肺疾患(珪肺、アスベスト肺)、急性呼吸窮(促)迫症候群(ARDS)、縦隔疾患、胸膜の疾患(胸膜炎、胸膜悪性中皮腫)、肺循環障害(肺高血圧症、肺塞栓症など)、など多くの疾患を扱います。

呼吸器疾患は今後も増加します。

これらの4大疾患は、高齢化社会を迎えてさらに増えると考えられています。図1はWHOによる統計で、2020年の世界における死因の推移を予測したものです。3、4、5位をCOPD、呼吸感染症、肺がんが占めます。

図2、3は厚生労働省から発表された日本の統計です。平成26年の時点で死因の第1位は悪性新生物、第2位が心疾患、第3位は脳血管疾患を抜いた肺炎でした。また、悪性新生物の部位別死亡率を比較すると、男性は肺癌、胃癌、大腸癌の順に多く、女性は大腸癌、肺癌、胃癌の順に多いという結果でした。経時的にみると、特に男性の肺癌、女性の大腸癌と肺癌が右上がりに増えていることが分ります。呼吸器疾患は生命の危機に直結する疾患も多いため、十分な注意が必要です。

国民によく理解・認識されていない疾患が幾つかあります。

厚生労働省の難病対策事業で指定されている難病は従来の56疾病から、306疾病(平成27年1月1日に110疾病が指定、同年7月1日に196疾病が追加指定)となっています。13疾病が呼吸器系疾患に分類されています。

α1-アンチトリプシン欠乏症(指定難病231)、巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)(指定難病278)、サルコイドーシス (指定難病84)、先天性横隔膜ヘルニア(指定難病294)、特発性間質性肺炎 (指定難病85)、肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症(指定難病87)、肺動脈性肺高血圧症 (指定難病86)、肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)(指定難病229)、肺胞低換気症候群(指定難病230)、閉塞性細気管支炎(指定難病228)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症 (指定難病88)、リンパ脈管筋腫症 (指定難病89)、リンパ管腫症/ゴーハム病(指定難病277)で、重症度を満たせば医療費の補助が受けられる治療対象疾患になっています。

全身性疾患が呼吸器に病変をきたすことも多く、各種膠原病や自己免疫性疾患、IgG4関連疾患(指定難病300)など、さらに多くの疾患を当科では診療しております。また、私たちは厚生労働省難治性疾患研究班の一員として、これら疾患の病態解明や治療法の開発に取り組んでいます。

今までにない新しい疾患も出現します。

かつて、SARS(重症急性呼吸器症候群)や高病原性鳥インフルエンザが、大きな問題になりました。呼吸器に限局した感染症ではありませんが、マダニに咬まれることによって発症するSFTS(severe fever with thrombocytopenia syndrome:重症熱性血小板減少症候群)とういう疾患が、最近、問題になっています。SFTSは、2011年に初めて特定された新しいウイルス(SFTSウイルス)によって引き起こされます。潜伏期は(マダニに咬まれてから)6日~2週間程度です。症状は発熱、消化器症状、呼吸困難などで、重症化して死亡することもあります。治療法は、現在のところ有効な抗ウイルス薬などの特異的な薬はなく、対症療法が主体になります。

今までにない新しい治療法も出現します。

これまで肺がんの治療は外科手術、放射線療法、化学療法の3つの中から、全身状態や病期を鑑みて選択されてきました。平成27年12月17日になって、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)という新しい薬が、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対して認可されました。オプジーボは自身のがん細胞を攻撃する免疫機能を高める薬剤で、これまでの治療とは異なり、がん免疫療法と呼ばれています。肺がんに対する第4の治療として大きな注目を集めています。

以上のように呼吸器疾患は多彩であり、患者さんの数も多く、内科学の中で重要な分野を占めています。

※図や表はクリックすると大きいものが御覧いただけます。

図1 世界における死因の順位に関する予測
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(Murray CJ & Lopez AD Lancet 349: 1498, 1997)(一部改編)

図2.死因別にみた死亡率の推移(厚生労働省HPより)

  • 注1)平成6・7年の心疾患の低下は、死亡診断書(死体検案書)(平成7年1月施行)において「死亡の原因欄には、疾患の終末期の状態としての心不全、呼吸不全等は書かないでください」という注意書きの施行前からの周知の影響によるものと考えられる。
  • 注2)平成7年の脳血管疾患の上昇の主な要因は、ICD・10(平成7年1月適用)による原死因選択ルールの明確化によるものと考えられる。

図3.悪性新生物の主な部位別死亡率(人口10万対)の年次推移(厚生労働省HPより)