よく理解されていない疾患

COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺気腫

COPDは喫煙や大気汚染が原因になって、慢性の気道炎症や気腫性変化が生じ、呼吸機能検査で閉塞性換気障害(息が通常より通りにくくなること)を呈する疾患です。最大限の力で息を呼き出した空気の量(この量を努力性肺活量(FVC)といいます)に対する、最初の1秒間に吐き出される空気の量(この量を1秒量(FEV1)といいます)の比を1秒率(FEV1/FVC x100(%))といいます。この1秒率を用いて閉塞性換気障害の程度を評価します。正常の人の1秒率は70%以上ですが、1秒率が70%未満の場合にCOPDと診断します。

一方、肺気腫は明らかな線維化を伴わず肺胞壁の破壊を伴い、終末細気管支より遠位の気腔の異常、かつ永久的拡張を示す状態をいいます。COPDが呼吸機能検査で診断するのに対して、肺気腫は病理学的な診断です。臨床的には、胸部CTで気腫性変化が認められれば肺気腫と診断できます。

COPDの方に肺気腫の方は多いですが、CTでまったく気腫性の変化がみられない(非気腫型)COPDの方もいらっしゃいます。反対に、CTで肺気腫と診断されても、呼吸機能検査に異常がなければCOPDという診断にはなりません。

COPDの主な症状は、慢性の咳・痰、体動時の息切れ・呼吸困難です。治療しないと息切れ・呼吸困難が徐々に増悪します。

COPDの患者さんは、実はかなり多いことが分かってきました。図1はわが国におけるCOPDの罹患率をみた成績です。40歳以上で増加し、70歳以上では17.4%と5人に1名弱と高頻度になります。結局、40歳以上の成人に8.5%、300万人以上と高い罹患率です。しかし、高齢者に咳、痰、息切れは普通だと思われ、多くのCOPDは見逃されていて、治療を受けている患者さんは38万人(7.2%)に過ぎないといわれています。

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図1.

COPDは症状、診察所見、胸部X線写真などから推定がつきますが、診断には呼吸機能検査が必須です。また、COPDの患者さんは、肺がんの合併率が一般の方に比し4.5倍と高頻度です。気腫性変化と気道病変の評価に加えて肺がん合併の有無を確認するためにも、胸部CT検査をお勧めしています。

治療は、まず禁煙です。早期に発見されると禁煙だけでもかなり良くなります。進行に応じて、気管支拡張薬を中心とした薬物療法をおこないます。さらに、進行すると在宅酸素療法、比較的若い方には手術療法(肺容量減少術、肺移植)も考慮されることがあります。また、呼吸器リハビリテーションは、かなり早い時期から開始すると有効です。呼吸器感染症の予防は、COPDの悪化を防ぐのに有効です。インフルエンザワクチンは毎年接種することをお勧めしています。また、肺炎球菌ワクチンも有効です。

いずれにしましても、COPDの診断、治療、管理には一度は呼吸器専門医の診察を受けられることをお薦めします。

間質性肺疾患

肺炎は理解できても、間質性肺炎と言われると理解できない方が多いと思います。我々が吸い込んだ空気は、気管、気管支、細気管支と20回以上分かれた先にあるブドウの房のような嚢状の袋である細胞の壁(肺胞)に到達し、空気中の酸素を血液中に取り入れ、炭酸ガスを放出するという(ガス交換と言います)重要な機能をおこないます。この肺胞の壁を間質と言います。この間質の病気を一括して、間質性肺疾患といいます。

間質性肺疾患には特徴がいくつかあります。初期の症状は、一般的に乾性咳嗽(から咳)です。肺胞はガス交換に重要で、病変が左右の肺に広がっていくと息切れ・呼吸困難がみられます。運動すると酸素の濃度が急激に落ちるのが特徴です。

間質性肺疾患には多くの疾患が含まれます。特発性間質性肺炎、膠原病肺、サルコイドーシス、職業性肺疾患(珪肺、アスベスト肺)、薬剤性肺障害、放射線肺炎、過敏性肺炎、癌性リンパ菅症、などがあります。次項で特発性間質性肺炎について概説します。

治療法はそれぞれの疾患毎に異なりますので、間質性肺疾患のどれに当てはまるか正しい診断が求められます。精密呼吸機能検査、胸部CT、気管支鏡検査(気管支肺胞洗浄、肺生検)など、専門家による診療が必要になります。

特発性間質性肺炎

間質性肺炎には粉塵の吸入などによる職業性、漢方薬やサプリメントなどの摂取による薬剤性、サルコイドーシスや膠原病、自己免疫性疾患などの全身性疾患随伴して発症するものなどがありますが、原因を特定できないものを特発性間質性肺炎(Idiopathic interstitial pneumonia(s): IIP(s))といいます(1、2)。

2011年に発行された日本呼吸器学会作成の“特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き(改訂第2版)”では、2002 年のATS(アメリカ胸部疾患学会)/ERS(ヨーロッパ呼吸器学会)国際的Consensus Statementに基づいて、IIPsを臨床診断名に病理診断名を対応させ、それぞれ7つに分類しています。①IPF(idiopathic pulmonary fibrosis:特発性肺線維症)、病理診断はUIP(usual interstitial pneumonia:通常型間質性肺炎)、②NSIP(nonspecific interstitial pneumonia:非特異性間質性肺炎)、病 理 診 断 もNSIP、③COP(cryptogenic organizing pneumonia:特発性器質化肺炎)、病理診断はOP(organizing pneumonia)、④AIP(acute interstitial pneumonia:急性間質性肺炎)、病理診断はDAD(diffuse alveolar damage:びまん性肺胞傷害)、⑤DIP(desquamative interstitial pneumonia:剝離性間質性肺炎)、病理診断もDIP、⑥RB-ILD(respiratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease:呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患)、病理診断はRB(respiratory bronchiolitis)、⑦LIP(lymphoid interstitial pneumonia:リンパ球性間質性肺炎)、病理診断もLIP、です(表 1)。IIPsのなかで最も多いのがIPFです(表 1)(2)。この2002年のATS/ERSのStatementでは、病理組織診断を必要としないIPFの臨床診断基準が発表され、現在まで広く使用されています(表 2)(2)。

2013年にはATS/ERSによってIIPs改訂国際集学的分類が報告され、IIPsはMajorとRareに分けられ、LIPはRare IIPsに分類されることになりました。Major IIPsの分類をお示しします(表3)(3)。この報告では、外科的肺生検を施行された症例の臨床診断はHRCT所見と病理所見を組み合わせて集学的な検討(multiple disciplinary discussion:MDD)を行って診断することが推奨されています。当院においてもびまん性肺疾患の診断に際しては、呼吸器内科医、放射線科診断医、病理診断医が一堂に会してカンファレンスを行い、総合的な判断を行っています。

IIPsの治療は、各疾患の臨床経過と薬剤に対する反応性を考慮して決定することが推奨されています。慢性経過のIPF、急性経過のAIP、IPFの急性増悪では一般的にステロイド(+免疫用制薬)に対する反応性が不良ですが、他のIIPsはおおむね反応性良好とされています(図 1)(2)。ただし、ステロイドは、一旦、投与が開始されると簡単に減量・中止することが困難であることも多いため、適応に関しては慎重に判断すべきです。2013年のATS/ERSによる報告ではIIPsの臨床経過に応じた治療の目標、管理の目安が発表されており、より現実的な方針が示されています(表 4)(3)。

最後に、最も症例数が多いIPFについて説明します。IPFの治療に関して有効性が認められているのは、現段階では酸素療法と肺移植のみです(4)。有効な治療法のないIPFは、診断が確定されてからの平均生存期間が2.5~5年という予後不良の疾患です(2)。5年生存率は30%程度であり、手術不能非小細胞肺癌や膵癌と比較すれば長期であるものの、その他の癌種と比較して決して高くない疾患です(図2)(5)。また、経過中に肺癌の合併が10-15%の症例にみられるということが報告されています(2)。早期に発見されれば手術切除可能な症例も少なくないため、定期的にCTで評価を行うなど適切な管理が望まれます。さらに、IPFは急性増悪(1日で呼吸状態が増悪して肺が真っ白になってしまうこと)を生じる可能性がある(2)ということにも、十分な注意が必要です。

2013年のERJに掲載されたReviewでは、IPFに対する薬物療法として強く推奨されたものはなく、弱く推奨されたのが急性増悪時のステロイド療法と不顕性誤嚥に対する薬物療法のみでした(6)。

最近になって、pirfenidone(商品名:ピレスパ)やnintedanib(商品名:オフェブ)の有効性が報告されており (7、8)、効果が期待されているところです。

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参考文献

1. American Thoracic Society : European Respiratory Society International Multidisciplinary Consensus Classification of the Idiopathic Interstitial Pneumonias. Am J Respir Crit Care Med, 165 : 277-304, 2002.
2. 日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会:特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き(改訂第2版).南江堂,東京,2011.
3. Travis WD, Costabel U, Hansell DM, King TE Jr, Lynch DA, Nicholson AG,et al.:An official American Thoracic Society/European Respiratory Society statement:Update of the international multidisciplinary classification of the idiopathic interstitial pneumonias.Am J Respir Crit Care Med, l88:733-748, 2013.
4. An Official ATS/ERS/JRS/ALAT Statement: Idiopathic Pulmonary Fibrosis: Evidence-based Guidelines for Diagnosis and Management Am J Respir Crit Care Med, 183: 788–824, 2011
5. Vancheri C, Failla M, Crimi N, Raghu G. Idiopathic pulmonary fibrosis: a disease with similarities and links to cancer biology. Eur Respir J, 35: 496-504, 2010
6. Antoniou KM, Margaritopoulos GA, Siafakas NM. Pharmacological treatment of
idiopathic pulmonary fibrosis: from the past to the future. Eur Respir Rev, 22: 281-291, 2013.
7. King TE Jr, Bradford WZ, Castro-Bernardini S, Fagan EA, Glaspole I, Glassberg MK, et al.; ASCEND Study Group. A phase 3 trial of pirfenidone in patients with idiopathic pulmonary fibrosis. N Engl J Med. 370: 2083-2092, 2014.
8. Richeldi L, du Bois RM, Raghu G, Azuma A, Brown KK, Costabel U, et al.; INPULSIS Trial Investigators. Efficacy and safety of nintedanib in idiopathic pulmonary fibrosis. N Engl J Med. 370: 2071-2082, 2014.